要点
- つみたてNISAで買付した各年分は「買付年」から最長20年間が非課税期間。期間終了後は 原則として新しいNISAへのロールオーバーはできず、課税口座へ移管されます。金融サービス庁+1
- 非課税期間終了時点で保有している資産は 金融機関側で自動的に課税口座(特定口座等)へ払出し(移管)される のが通常の運用です(売却しない限り自動で移管される)。詳しいスケジュール・通知は各社から案内されます。松井証券サポート+1
- 移管時の取得価額は移管時の時価(年末の時点の価格)にリセットされます。これにより、移管後の税務上の扱い(売却時の課税)は移管後の価格差で計算されます。松井証券サポート
以上を踏まえ、出口は主に (A) 非課税期間内に売却して現金化 する、または (B) 非課税期間を満了させて課税口座へ移管→そこで保有or売却 の2択になります(状況によって両方の組合せもあり)。
以降、選択肢ごとのメリット・デメリット、実務手順、具体例、推奨アクションを詳しく解説します。
👉 NISAと並行してiDeCoを利用している方は、出口戦略を考える前に掛金や商品の見直しも重要です。詳しくはこちらの記事で解説しています。→iDeCo活用術:掛金の増額と運用商品見直しのタイミング(完全ガイド)
20年間積み立てを続けるには、途中で気持ちが折れない工夫も必要です。
そのヒントは「長期投資のモチベーションを保つ方法」で詳しく紹介しています。
まず確認:あなたの「何年に買った銘柄(ロット)」がいつ終了するかを調べる
つみたてNISAは「買付した年ごと」に非課税期間のカウントが始まるため、保有中の投資信託やETFごとに“非課税終了年”が異なります。
例:2025年に買った分は2044年末が目安(買付年+19年の年末)というイメージです(金融機関の取扱ルールにより表示方法や扱いが若干異なる場合があります)。まずは:
- 証券会社の保有一覧で「買付年(または非課税終了年)」を確認する。
- 各ロットごとに「終了年リスト」を作成する(1行に銘柄名・口数・買付年・終了年を並べる)。
(※制度の基本は金融庁の案内参照。具体の扱いやスケジュールは各社からの案内を確認してください。)金融サービス庁+1
非課税期間が終わる前に、積立内容を見直しておくとスムーズに出口戦略へ移行できます。
見直し方のコツはこちらの記事を参考にしてください👇
👉 つみたてNISAの途中変更ガイド|積立額・銘柄・証券口座の見直し方
非課税期間終了時に「自動的に起きること」── 実務的な流れ
一般的な実務フロー(多くのネット証券が採る方法)は次のとおりです。
- 非課税期間が終了する年の年末に向けて、金融機関が対象保有銘柄のリストを把握。
- **年末(12月末等)の時価を基準にして、課税口座(特定口座または一般口座)へ自動移管(払出し)**される。移管処理は金融機関側で実行され、原則、利用者が個別に手続きをしなくても移管されます。松井証券サポート+1
- 移管後は配当や売却益に通常どおり税金がかかる(約20%前後の譲渡益課税など)。ただし移管時の**取得価額は「移管時の時価」**に変更される。松井証券サポート
重要:ロールオーバー不可
新制度(2024年以降スタートの新NISA)に「ロールオーバー」することはできない旨、金融庁も明確に案内しています。つまり非課税の延長は基本的にできません(※特例やジュニアNISAの別扱い等は別途要確認)。金融サービス庁+1
金融機関によって「移管の具体的な処理日・通知時期」は異なります。たとえば「移管に関する案内を10月頃にお知らせします」といった案内をする会社もあります。
必ず自分の証券会社からの案内をチェックしましょう。楽天証券+1
非課税期間が終わるタイミングは、資産全体の見直しにも最適です。
👉 続けて読みたい:【ポートフォリオ再構築の実例】10年後を見据えた資産配分の見直し方
選択肢の詳細(メリット・デメリット)

A. 「非課税期間中に売却して現金化する」
メリット
- 非課税期間中の売却は非課税(利益に税金がかからない)。
- 課税口座に移管される前に現金化しておけば、移管後の税課題(将来の課税リスク)を避けられる。
- 資金が必要な場合、確実に現金化して手元に戻せる。
デメリット
- 売却すると市場の“その後の上昇分”を取り逃がす可能性がある。
- 売却タイミングを誤ると、税制上は有利でも結果的に機会損失となることも。
適する場面
- 明確に現金が必要な場合(住宅頭金、教育費など)。
- 非課税期間終了時に「含み益が十分ある」場合で利益確定をしたいケース。
B. 「非課税期間を満了して課税口座へ移管した上で保持する(移管→保有)」
メリット
- 売却による実現損益を避け、長期的な上昇を狙える(ただし移管後の上昇分は課税対象)。
- 売却タイミングで相場が落ち着いていない場合、すぐに売らず様子見できる。
デメリット
- 移管後は運用益に課税される(以降の売却益は課税対象)。
- 移管時に取得価額が「移管時の時価」にリセットされるため、税務上の損益計算が移管後基準になる(過去の含み益分は“非課税で消化された”という扱い)。松井証券サポート
適する場面
- まだ長期投資姿勢を崩さず、今後も保有したい場合(ただし税を意識した出口戦略が必要)。
C. 「移管直前に売却して再投資(課税で買い直し)する」
考え方
- 非課税期間終了前に売却して、課税口座で買い直す方法。非課税期間中の売却なら税がかからないため、いったん売却してから課税口座で再投資(買い直し)することで税負担とポジション調整を行えます。
メリット
- 「非課税期間内に売却(利益は非課税)」→「課税口座で買い直し(新たな取得価額)」で移管時の“取得価額リセット”の影響を回避できるケースがある。
- 税制上・会計上の扱いを自分で制御したい場合に有効。
デメリット
- 売却と買い直しのタイミングでスリッページや手数料(売買コスト)が発生する場合がある。
- 相場タイミングリスク(売却→買い直しの隙間で価格が動く)を負う。
「取得価額がリセットされる」って具体的にどう影響するのか(数値例)
移管時の扱いについて理解するために、具体例で確認します(簡易)。
例1:含み益がある場合(保有→移管)
- ある銘柄を 120万円で購入 → 非課税期間満了時の時価が 150万円 → 移管が行われる。
- 移管後の取得価額は 150万円 にリセット。
- つまり、購入時から2044年末までの値上がり分(30万円)は非課税で確定している。移管後にさらに上昇して200万円で売却すると、課税対象は移管後の値上がり分(200−150=50万円)になります。松井証券サポート
例2:含み損がある場合(注意点)
- ある銘柄を 120万円で購入 → 非課税期間満了時の時価が 70万円 → 移管が行われる。
- 移管後の取得価額は 70万円 にリセット。
- 重要:移管時に価格が下落していた場合でも、当初の取得価額との差額分の“損失”は損金として扱われない(NISAの非課税口座だったため)。そのため、過去の購入価格(120万円)と移管後の取得額(70万円)の差を税務上で損失として計上することはできません(=損失を税務で使えない)。松井証券サポート
→ 結論:含み損のときは「移管前にどうするか(売却して現金化する or 移管して様子を見る)」を慎重に判断してください。売却してしまうとNISA内での損失は税務上マイナスとして使えません(NISAは非課税かつ損益の帰属が税務上認められない仕様のため)。松井証券サポート
実務上の注意点(期限・通知・受渡日・売却時の受渡タイミング)

- 通知時期:多くの証券会社は「非課税期間終了が近づくと事前案内」を出します(例:10月頃に年末の処理について案内する会社あり)。必ず自分の口座メール/お知らせを確認。楽天証券+1
- 受渡日(決済日)に注意:売却して課金する場合、売買の受渡(決済)タイミングにより、課税口座への払出しとの兼ね合いで年をまたぐ可能性があります。年末の処理は取引日基準ではなく「年末の最終営業日基準」で処理されることがあるため、売却は余裕を持って早めに実行するのが安全です。楽天証券
- 手続き不要で移管されるが確認は自分で:移管は自動のことが多いですが、移管後の取得価額や計算方法が口座に反映されるタイミングは会社によるので、年明けに移管結果(明細)を必ず確認してください。松井証券サポート+1
👉 売却で利益が出た場合は、税金や確定申告の対応も必要になります。
詳しくは、こちらの記事で仕組みと申告方法を詳しく解説しています。
→ 投資初心者のための税金と確定申告ガイド|利益・申告不要枠・損益通算まで徹底解説
出口戦略を考える際にも、積立と一括では判断基準が変わります。
> 運用方法ごとのメリット・デメリットは、こちらの記事で比較しています。
➡ 積立投資と一括投資どっちが得?初心者が知るべきリスク・リターンと心理的メリットを徹底比較
具体的な「出口プラン」例と推奨アクション(状況別)
ケースA:短期的に資金が必要(1〜3年で使う予定)
推奨:非課税期間内に売却して現金化。
理由:移管後は課税処理や売却時に税負担が生じるケースが増えるため、必要資金は事前にNISA内で現金化する方が確実。
ケースB:長期で保有したい(引き続き運用する)
推奨:
- 非課税終了時に「移管→課税口座で保有」を選択
- 移管後の取得価額を確認し、将来の売却益に備えてリバランスや税対策を検討(分散売却など)
理由:長期成長の期待が高く、短期売却で機会損失を出したくない場合。
つみたてNISAを続けながらiDeCoも活用すれば、
老後資金と中期資金を無理なく両立できます。
👉[iDeCoとつみたてNISAの併用術]で、長期視点での最適バランスを解説しています。
ケースC:非課税終了時に含み損(価格が下がっている)
推奨:
- 選択A:どうしても損失を税務上活用したい場合は、移管前に売却して課税口座で買い直すことで将来的な損益計算を自分でコントロールするケースが考えられる(ただしNISA内での損は税控除にならない点に注意)。
- 選択B:市場回復を期待して保持(移管後に回復した分は課税対象)
判断基準:生活資金やメンタル面。含み損でも長期で見て回復が見込めるなら保有継続もあり。松井証券サポート
税務に関するポイント
- 非課税期間中の売却利益は非課税。
- 移管後に生じる配当・売却益は課税対象(以降は通常の譲渡益課税ルール)。松井証券サポート
- 移管時に取得価額が時価にリセットされるため、過去の含み益は“非課税で消化された”扱いになります。松井証券サポート
- NISA口座内での損失は税務上の損益通算や繰越控除の対象にならない(つまりNISA内で売却して損失が出ても税金面のメリットはない)。金融サービス庁+1
→ 税務に関する正確な扱いは税理士または証券会社の税務相談窓口で確認してください。
今すぐできるチェックリスト
- 証券会社の口座で「保有銘柄ごとの買付年(または非課税終了年)」を確認したか?
- 非課税終了予定の銘柄リスト(年別)を作成したか?
- 各銘柄について「売却するか、移管して保有するか」の方針を決めたか?(優先基準:資金需要・税負担・長期期待)
- 売却を選ぶなら年末の処理に間に合うよう早めに注文をかけたか(証券会社の締切を確認)?楽天証券
- 移管後の取得価額や保有明細を年明けに必ず確認する予定を立てたか?(確認日をカレンダーに登録)松井証券サポート
- 複雑な税務処理が発生しそうなら税理士に相談する準備はあるか?
よくある質問(FAQ)
Q1. 非課税期間終了の年に“ロールオーバー”できますか?
A1. 旧制度の一般NISAではロールオーバーが可能だった経緯もありますが、つみたてNISAの非課税期間終了後に新NISAへのロールオーバーは基本的にできないと金融庁は案内しています。処理は課税口座への移管となるのが原則です。金融サービス庁+1
Q2. 移管されたときの“取得価額”はどうやって確認できますか?
A2. 多くの証券会社は移管時に新しい取得価額(移管時の時価)を口座明細に反映します。移管後に口座の保有明細(約定履歴)を確認してください。疑問があれば証券会社のサポートへ連絡を。松井証券サポート+1
Q3. 移管されたら自分で売却できますか?
A3. はい。移管後は課税口座内の保有として扱われるため、通常どおり売却(課税)が可能です。ただし売却益は課税対象となります。松井証券サポート
長期運用を続けてきた人でも、出口戦略を考える際に陥りやすいミスがあります。
投資初心者が避けるべき具体的な行動は、こちらの記事でチェックしておきましょう。
👉 投資初心者が陥りやすい失敗例と対策5選|やってはいけないミスと正しい行動
まとめ

- まずは自分の口座で「買付年」ごとの終了スケジュールを確認することが第一歩。金融サービス庁
- 明確な資金ニーズがあるなら、早めに非課税期間内で売却して現金化するのが確実。
- 長期保有の方針であれば、移管→課税口座で保有しつつ、移管後の税負担を念頭にリバランスや分割売却戦略を立てる。松井証券サポート
- 各社の案内(通知時期・年末処理ルール・移管の詳細)は異なるため、必ず加入金融機関の案内を確認し、不明点はカスタマーサポートや税理士に相談することを推奨します。楽天証券+1
参考(主要出典)
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト(つみたてNISA・新制度/非課税期間の扱い等)」。金融サービス庁+1
- 各証券会社のFAQ/案内(松井証券:非課税期間終了時の対応、SBI証券FAQ、楽天証券の案内等)。松井証券サポート+2SBI証券+2
- NISA制度に関する解説(主要銀行・証券会社の解説記事)。MUFG銀行+1


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